今だから見てほしい「眠れる森の美女」の映像表現


 お久しぶりで〜す(本当に久しぶり)。クロイタダシです。

 本日はFRENZ等でお世話になっている「黒井心」さんが主催されている「ここ一年で心に残ったベストエンタメコンテンツを全力でオススメする Advent Calendar 2024」用の記事です。

 昨日の「紅ばめ」さんの記事からバトンタッチ。21日目の今日は私が記事を書く順番です。

 今回参加するアドカレでは「2023年12月頭〜2024年11月末の期間内に初公開・初解禁の新作を推奨しますが、執筆者が今年初めて触れた過去作もOKとします。」と記載してあったので今年少し感激を受けたちょっと古い映画について触れようかなと思います。

他の方の記事はこちらから見れますよ〜


記事の薄っぺらさに気付いてしまったクロイタダシ(第2形態)

 周りの皆様が書かれた情熱的な記事と、試しに下書きしてみた自分の記事を見比べて、自分のだけ薄っぺらい記事になってしまうと思い何を書こうか悩んでいたのですが、私は1959年公開された長編アニメーション作品の「眠れる森の美女」についての記事を描いてみようかと考えました。

 「いやいや、今2024年ですよ。そんな古い作品語らなくても」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、この作品は今だからこそ見てほしいアニメーション表現がたんまり詰まっています。


「眠れる森の美女」について

 白雪姫やシンデレラなど様々なディズニープリンセス作品が世界中から高評価を取得しだす兆しを見せ始めたのが1950年代前半。こんな時代のさなかにこの作品の企画が生まれたといいます。

 最初にも記載した通り、この作品は1959年に公開されます。実は、この作品が制作されている裏でちょうど1955年に開園したディズニーランドの建設も行われていました。そのためディズニー社にとっては大型企画を二つ同時に抱えていた状態になっており、かなりテンヤワンヤだったそうです。ですがそんな状態でも手は抜かずに、見る側が気づかないような細部にまで工夫が施されています。

↓ディズニー公式があげているこちらの映像(引用)

 こちらはディズニー公式がYouTubeにアップしている英語版の一部本編映像。
フクロウが王子様の仮装をし、運命の人と巡り会えることを夢見たオーロラ姫と踊るシーンです。

 こちらのシーンでのオーロラ姫の見た目のモデルとなったのは女優のオードリーヘップバーン氏と言われています。見ていただいたらわかると思いますが比較的、他のプリンセスに比べて顔・身体の骨格がしっかりとしています。

オーロラ姫のスタイル

 というかスタイル良すぎだろ。どんな食事したらこんなスタイルなるんですかね、これ。少し教えてくれんかい。

 それはさておき、骨格がしっかりとしているキャラクターなのにもかかわらず映像で見ると柔らかい印象を受けれます。普通は骨格がしっかりしていれば、動きがぎこちなくなりキャラクターに冷淡なイメージがついてしまうのですが、そういうようなものは一切感じ取れません。

 この作品では冷淡さを感じ取らせないように、様々な工夫が施されています。特に力を入れているのはオーロラ姫の動き

 風が吹いた時に髪やスカートが揺れますが、他の登場人物の服よりもワンテンポ遅らせて揺れ始めたり、オーロラ姫の上半身の動きと下半身の動きがそれぞれ正反対になるように描写したり、スカートの色を背景と同化させることによって体のラインをぼんやり見せたりなど、、、この作品には他の作品にはないような動きや描写を入れていることがわかります。

このような工夫が施されている中で、私が特に注目してみていただきたい動きがあります。


オーロラ姫の目

ディズニープリンセスはどれも表情豊かで目がよく動きます。

 今では当たり前のことかもしれませんがこれは「眠れる森の美女」以前の作品のプリンセスにはそこまで目の動きがありません(白雪姫とかシンデレラなど)。
ある意味、ディズニープリンセスは顔や目がよく動くという概念を作り上げたのはオーロラ姫だと言ってもいいでしょう。

 現に、目の動きをよく見せるためオーロラ姫がクライマックスで目覚める時以外は瞳に模様が描いていなかったり、ハイライトを入れないようにして目の動きが目立つようにしています。

動きだけではなく、目の形のパターンも非常に豊富です。

 お見苦しいかもしれませんがとりあえず一部を書き出したものです。たった2分半の映像だけでこれだけのパターンがあります。今回紹介した映像内で登場するパターンは大きく分けて2パターンです。

動物とお話したり気を許している時と、王子様に出会った時

 オーロラ姫が動物とお話したり気を許している時には、まぶたの形が丸くなり、目の動きが大胆になります。まぶたを大きく開いて、表情に柔らかい見えるようにしています。模様の少ない瞳を大きくさせ、まるでその場の一部であるかのような、自然な親近感を感じさせています。

 この時、彼女の体全体もふんわりとした動きとなり、まるで周りの空気と一体化しているような柔らかい印象が与えられます。

 一方、王子様に出会った時は、まぶたの形がジト目のように平坦になり、目の動きが少なくなります。オーロラ姫が目の動きが控えめにすることで、心の中で何か特別な感情が芽生え始めていることを感じます。

 王子様との出会いに対して、最初は少し照れていたり、警戒心がある様子が表現されます。まつ毛が平坦になり目が大きく動かないことが、彼女の内面での慎重さや心の葛藤を反映し、視覚的に彼女の微妙な気持ちの変化を伝えます。

 この2つのパターンを使い分けすることによって、オーロラ姫は、外の世界に接している時と、内面的な感情など繊細に表現されます。このようなアニメーションにおける目の動きとまつ毛の形の使い分けは、キャラクターの感情の変化を直に伝えやすくなる(と思われ)ます。

 アニメーションをつけるとき目の動きが大胆であれば大胆であるほど、キャラクターに柔らかさがつきます。この目の動きに2パターンの緩急をつけることでオーロラ姫の暖かい心を見せることができている(と思われる)のではないでしょうか。


さいごに

 私の中では「眠れる森の美女」は、ディズニーアニメーション映画の中でも革新的な作品だと思っています。手描きアニメーションによる柔らかな動き、そして色彩の使い方が巧みに組み合わせて1つの作品として完成させる。これが今なお、世界中に感動を与えている1つの理由だと私は思うのです。

 この映画は、キャラクターの動き・目の表現・背景美術・そして色彩に至るまで、工夫が施され、そのすべてが一体となって私達にインパクトを与えてくれています。この作品は、当時のアニメーション技術でできる芸術的な魅力を出し切った作品だと私は思います。

 世代的に作画と画質の向上、ストーリーやキャラクターのインパクトでどう売り出せるかが中心となっている現代のアニメを見て育ってきた私から見ると「眠れる森の美女」というアニメーションで見せる作品というのが少し特別に見えたのです。

 やはりアニメーションでしかできない動きがあるのではないか、今の時代だからこそ、作る側の人間としてそういうアニメーションを作ってみたい。そういう意味を込めてこの記事を書きました。

 また一つ勉強になったな~。以上です。

 ということで明日は「Lost Tickets」さんの記事です。

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著者

クロイタダシ